「私にしかできない仕事」を作りたい。上場企業OLの肩書きを脱いで選んだ私の生き方──女性支援コミュニティ代表・白鳥音々

取材・文:今村優里(Change/me)
会議では指されないように下を向き、同期や後輩が次々と昇進していく姿をただ見つめる。
「このままでいいのかな・・・」。
上場企業の会社員として安定した日々を送りながらも、どこか自分らしさを見失っていた白鳥音々さんに、転機が訪れたのは2020年1月のことでした。
渋谷のオフィスで仕事をしていたとき、不意にひとつの言葉が胸に響いたといいます。
「私にしかできない仕事」。
その瞬間から、彼女の人生は大きく動き出しました。
いまでは、女性のキャリアや自立を支援するコミュニティを立ち上げ、多くの仲間とともに未来を切り拓いています。
白鳥さんが自ら変化を起こし、理想の生き方を選び取ってきた歩みには、私たちが人生を描き直すためのヒントが詰まっています。
「Change story」は、人の“Change(変化)”にフォーカスする企画です。誰かの変化には、その人だけのきっかけや物語があります。 そのエピソードにふれることが、あなた自身の「変わりたい」という気持ちと自然につながっていくはず。 ここで出会うストーリーが、「私も一歩踏み出してみよう」と思えるきっかけになればうれしいです。
渋谷のど真ん中で働くキラキラOL、それでも自信を失っていた会社員時代

Q. 現在、どのような活動をしていますか?
A. 女性のキャリアや自立を支援するコミュニティを運営しています。日本国内外に約60名のメンバーが在籍し、コンサルティングやコーチング、イベント企画などを行っています。
そのほか、モデルや女優業なども行っており、活動の幅は広いですが、根っこにあるのは「自らに限界をつくらない」という思いです。自分の内なる声に耳を傾け、解放し、活躍できる女性を輩出するために、まずは私自身が挑戦し続けることを大切にしています。
Q. もともとは今とは全く違う会社員時代を送られていたとうかがいました。
A. そうなんです。以前はとある上場企業で人事をしていました。渋谷のオフィスに通う暮らしは、外から見ればキラキラした生活に見えていたかもしれません。
でも実際の私は、自己肯定感がとても低く、自分の意見を言うことができない控えめなタイプでした。会議では「当てられないように」と下を向き、後輩が昇進していく姿を見ては自信を失っていました。
今振り返れば、昇進できなかったのは自分にも原因があったと理解できますが、当時は「私はダメなんだ」「私は評価されない人間だ」と思い込んでしまっていたんです。
「私にしかできない仕事がしたい」、気づけば退職届を出していた

Q. 人生の転機はどんな瞬間でしたか?
A. 2020年1月、オフィスで仕事をしていたときです。「私にしかできない仕事」という言葉が、突然、降りてきたんです。当時は200人規模の採用管理を任されていて、やりがいはありました。
ただ、「これは誰にでもできる仕事なのでは」と思ってしまう自分がいて・・・。どこか満たされなさを感じていました。「波乱万丈で一歩ずつ歩んできた私だからこそできることがあるはず」。そう強く思った瞬間、いても立ってもいられず、その3ヶ月後には退職届を出していました。
Q. 随分と思い切った決断だと思います。当時、どんな自分になりたいと考えていましたか?
A. 漠然と「私らしくもっと輝きたい」と思っていました。私はいつも遅咲きなんです。モデルやバレエの主役も、30歳近くになってからようやく掴んだ夢でした。
だからこそ「誰だって、いつからでも輝けるんじゃないか」「その背中を押せる存在になりたい」と思ったんです。具体的なロールモデルもなければ、プランもないまま、思いに突き動かされるように決断を下しました。
人との出会いが広げた世界、「私にもこんなことができるんだ」

Q. 「自己肯定感が低い」という音々さんがそのような変化を起こせるようになるために何か準備をしていたのでしょうか?
A. 行動範囲を広げて、自分の視野を広げることを少しずつ意識していました。会社と自宅の往復だけの日々で、人との接点を避けていたのですが、「生きづらさの原因は視野の狭さにあるのかもしれない」と気づいたんです。いろんな人の考え方に触れるうちに「自分の考え方はこんなにも限定的だったんだ」と驚きました。
そのご縁で、とあるサークルの代表に抜擢していただいたときは、「私にもこんなことができるんだ」と大きな自信につながりました。その経験が土台となって、本当にやりたいことを見つけたときに、迷わず行動に移せたのだと思います。
Q. とはいえ、最初のころは初めての場所に足を運ぶのも抵抗があったのではないでしょうか?
A. そうですね。でも当時の私は本当にどん底で、「このままでは生きていけない」という思いが強くありました。藁にもすがるような気持ちで、とにかく自分を変えたいと思っていたんです。どんな自分になりたいのかも、やりたいこともはっきりしていませんでした。
それでも、いろんな人と出会い、相手の素敵だと思うところを少しずつ取り入れていくうちに、理想の自分像が少しずつ形になっていきました。その積み重ねが、今の私のキャリアを形づくる大きな力になっています。
突然の母の死、限りある命がくれた力

Q. 変化を起こすとき、周りの反応を気にしてしまうこともあると思います。そんなとき、どのように自分の選択に立ち戻っていますか?
A. 社会人1年目のとき、母が突然亡くなりました。前日まで元気だった母が急に倒れ、命は本当に限りあるものだと痛感しました。誰よりも私を応援してくれていた母の顔を思い浮かべると、「私らしく生きなきゃ」と背中を押してもらえるんです。
会社を辞める決断をしたときも、周囲からは「大丈夫なの?」と笑われたり、心配の声をいただいたりしました。でも、その悔しさを「やり抜いて証明するぞ」という原動力に変えてきました。
Q. ぶれずに挑戦しつづけるために大切にしていることはありますか?
A. 自分を信じて応援してくれる人を周りに置くことです。自分の思考だけだとどうしても凝り固まってしまうので、人の考えを柔軟に受け取りながら進んでいけるようにしています。
実は私は怠け者なところもあるので(笑)、誰かが近くで見てくれているほうが頑張れるんです。だからこそ、信頼できる人の存在に支えてもらうことで、挑戦を続けられていると思います。
これからの未来と、変わりたいと願うあなたへ

Q. 今後の目標について教えてください。
A. 主宰する女性支援コミュニティを国内外に広げ、いずれは1,000人規模に成長させたいです。「自らに限界をつくらず、チャンスを掴める自立した女性像」が、大人から子どもまでスタンダードになる日まで、私は挑戦を続けます。そのために、まずは私自身がそれを体現する圧倒的な存在になれるよう、努力を重ねていきたいと思います。
Q. 最後に、読者へのメッセージをお願いします。
A. 私の大好きなシンデレラの言葉に「夢は見るだけじゃなく、考え、叶えるものよ」というものがあります。一度きりの人生、「こうだったらいいな」と夢見ているだけで終わらせるのはもったいない。夢があるのなら、ぜひそのチャンスをつかんでいただきたいと思います。
OL時代、いわば“暗黒時代”の私は、会社員を辞めて王子様に出会う──そんな古典的なシンデレラストーリーを自分も描かなくてはならないと思い込んでいました。でも、いろんな出会いや経験を通じて、その物語はどんどん書き換えられていったんです。
結果として、当時の私には想像もできなかった「自分自身の力で新しい道を切り開く現代版のシンデレラストーリー」を手に入れることができました。そうやって物語を書き直すことで、自分を縛りつけていた固定概念から解放されたのだと思います。
だからこそ、一歩踏み出し、視野を広げることは本当に大切だと私は思います。理想だと思っていた未来も、出会いや経験によってもっと磨かれ、全く新しい形に書き直されていくかもしれません。
Change/meには、そんな変化を応援してくれる素敵な人たちが集まっています。まずはイベントに参加して、少しでも接点を持ってみてください。きっとあなた自身のシンデレラストーリーを書き換えるきっかけになるはずです。
一緒にChangeできる日を、心から楽しみにしています。

次世代Princess株式会社 代表取締役
白鳥音々
2020年、上場企業OLの肩書を置いて、独立起業。
内なる心の声を開放して輝く女性を増やすべく、「Princessアカデミア」コミュニティーを立ち上げ、現在、国内外60名以上のメンバーが所属。
大規模イベントの企画主催・個人のコンサル/プロデュース、他、バレティス講師、モデル、女優としても活動中。
▼Instagram▼
https://www.instagram.com/balletriena
白鳥音々さんの歩みは、自己肯定感をなくしていた会社員時代から、自分の可能性を信じて挑戦を重ね、キャリアも生き方も書き換えてきた軌跡でした。
「夢は見るだけじゃなく、考え、叶えるもの」。
その言葉どおり、彼女は自らの手でシンデレラストーリーを書き換え、誰もが自分らしく輝ける未来を体現しています。
大きな変化は、特別な人だけが起こせるものではありません。自分の心に正直になり、出会いや経験を通じて少しずつ視野を広げていけば、誰もが新しい物語を描き直すことができます。
「変わりたい」と思った今こそが、その第一歩。Change/meは、そんなあなたの挑戦を応援する場所です。