「食べないダイエット」で壊れた体を、ピラティスが救ってくれた——ピラティスインストラクター・ARISA

取材・文:今村優里(Change/me)
「10代でモデルをしていた頃は、“食べないダイエット”が当たり前。それでも体型の悩みは消えず、産後には坐骨神経痛で歩けなくなるほど体を壊したこともありました。」
そう語るのは、現在ピラティスインストラクターとして活動し、2児の母でもあるARISAさん。華やかな世界にいながら、心も体も思うようにならない時期を経て出会ったのが、ピラティスでした。
体を整えることは、人生を整えることにつながる。
その言葉を体現するARISAさんの歩みは、「変わりたい」と願うあなたに、今すぐ一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。
「Change story」は、人の“Change(変化)”にフォーカスする企画です。誰かの変化には、その人だけのきっかけや物語があります。 そのエピソードにふれることが、あなた自身の「変わりたい」という気持ちと自然につながっていくはず。 ここで出会うストーリーが、「私も一歩踏み出してみよう」と思えるきっかけになればうれしいです。
モデル時代に陥った“食べないダイエット”の罠

Q. 現在の活動について教えてください。
A. スタジオとオンラインの両方でピラティスインストラクターをしています。主な対象は「隠れ肥満」と呼ばれる方たちです。
隠れ肥満とは、“体重は痩せていても筋肉が少ない状態(体脂肪率28%以上)”のこと。「標準体重なのにお腹だけぽっこり」「太ももやお尻だけが目立つ」という方が、実は隠れ肥満だったというケースはよくあります。
Q. モデル活動をしていたと伺いました。当時のお悩みについて教えてください。
A. 高校から本格的にモデルを始めて、雑誌や通販、店頭ポップなど幅広くやらせていただきました。ただ、モデルの仕事は常に「痩せること」が求められます。「2週間後の撮影までに5キロ落としてきて」と言われることもありました。
当時の常識は「食べない」ダイエット。雑誌に「氷(アイス)だけダイエット」のような情報が当たり前のように掲載されていた時代です。私も、朝昼はささみやサラダだけ、夜はきなこ牛乳で空腹をまぎらわすような生活をしていました。
Q. その結果、どんな状態になったのでしょうか?
A. 体重は166cmで45kgにまで落ちました。でも肌は荒れるし、頭はボーッとするし、とても「健康」とは言えませんでした。痩せているのに太ももやお腹は気になったまま。
「どこまで痩せればいいんだろう」と、出口の見えない迷路に迷い込んだような気持ちでした。
ピラティスとの出会いが教えてくれた、姿勢という答え

Q. ピラティスとの出会いを教えてください。
A. 当時、好きだったモデルさんがインストラクターになり、モニターを募集していたんです。「サインが欲しい」という下心で会いに行ったのが最初のきっかけでした(笑)。
そのレッスンで「反り腰だからお腹が出て見えるんだよ」と言われて衝撃を受けました。わたしの悩みの原因は、太っていることではなく、姿勢の問題だと気づけたんです。その日から「食べないダイエット」をやめて、体の仕組みに興味を持つようになりました。
Q. その後もピラティスは続けていましたか?
A. はい。21歳でピラティスに出会ってから、23歳で1人目を出産するまで近所のスタジオに通っていました。ただ子育てで時間がとれず、2人目の妊娠を機に足が遠のくようになりました。
産後の不調が気づかせてくれた「体を根本から整える」大切さ

Q. 出産後の体調はどうでしたか?
A. 出産間隔が短かったこともあり、2人目の出産後にひどい坐骨神経痛になってしまいました。歩くどころか立つこともできず、廊下を四つん這いで移動するような状態でした。
そんな状態では子どもの世話もできません。ベビーカーを押しながら整骨院に通い、とにかく痛みを取ってもらう毎日。体の痛みと動けないストレスで育児ノイローゼにもなりました。
Q. 10代の頃の極端なダイエットが影響していたと思いますか?
A. 関係していると思います。とにかく筋力のない身体の土台がマイナスな状態で妊娠をしたので、その負担に耐えられなかったのだと思います。1人目のときはピラティスやストレッチでケアしていましたが、2人目のときは余裕がなくて何もできないまま出産を迎えてしまったのも原因のひとつだと思います。
Q. 改めてピラティスを再開したのはその経験がきっかけですか?
A. はい。「根本から体を整えないとダメだ」と思いました。整骨院やマッサージは一時的には楽になりますが、根本的な解決にはなりません。
痛みを繰り返さないためには筋力や柔軟性で土台をつくる必要がある。そう気づいてからは、スタジオに通いながら自宅でもエクササイズを取り入れて、体を根本から整え直しました。
「正しさ」より「楽しさ」を伝えたい、インストラクターとしての想い

Q. そこから、インストラクターを目指したのはなぜでしょうか?
A. 私はすごく飽き性で、趣味も部活も続けられたことがないんです。でもピラティスだけは本当に楽しくて「一生できる」と思いました。
実は、1人目の出産前から「ピラティスを仕事にしたい」と思っていましたが、出産でタイミングを逃してしまって。2人目を産んでから資格を取り、本格的に活動を始めました。
Q. ピラティスなら「一生できる」と思えた理由はどんなところですか?
A. 一番は「自分もお客さまも健康でいられる」ところです。エステサロンで働いていたこともありますが、腰痛でコルセットがないと生活できないほどでした。お客さまはきれいになるけれど、自分には負担が大きいと感じていたんです。
でもピラティスは、お客さまもインストラクターも一緒に健康でいられる。このWin-Winな関係が魅力でした。座学で学んだ知識が実践につながる瞬間も楽しくて、「面白い!もっと学びたい」と思いました。
Q. ARISAさんがレッスンで大切にしていることは?
A. 「正しさより楽しさ」を大事にしています。最初から完璧にやろうとしなくても大丈夫。「ちょっと楽になった」「少しできた」。その感覚を味わってもらうことを一番に考えています。
私自身、運動嫌いで体育の持久走も歩いていたくらいなので、できない気持ちがよくわかります。だからこそ初心者でも楽しめるレッスンを心がけています。できないは伸びしろです。まずはお手本通りにできなくても楽しめればハナマルです!
「できない」を手放したら、子育ても仕事も両立できた

Q. 子育てをしながら働くうえで、大切にしていることはありますか?
A. 子どもの送迎があるので、仕事できるのは平日の9〜14時に限られます。ですが、それを言い訳にせず「だからこそ集中しよう」と考えるようにしています。
その原動力になっているのは、 「子育てを優先しながらでも仕事はできる」「子どもとの時間も、自分のやりたいことの時間も両立できる」、そんなお手本のような存在でありたい、という思いです。
そして何より、子どもたちに「楽しそうに働いている姿」を見せてあげたいと思っています。
Q.仕事も育児も両立したい女性たちの、ロールモデルになるために心がけていることは?
A. 「できない」という選択肢を捨てることです。子どもを産む前は言い訳ばかりでしたが、出産をきっかけに「できないと言っていたら一生何も変わらない」と痛感しました。
だから今は、憧れの人の真似をしてみたり、食わず嫌いせずにやってみたりしています。やってみないと自分に合うかどうかもわからないので、「とりあえずやってみる」を大事にしています。
Q. 最後に、変わりたいと思っている人へメッセージをお願いします。
A. まずは自分の体に触れてみてください。肩をさすったり腰をなでたりするだけでもかまいません。肩こりや冷えは体からのSOS。さすってあげるだけでも血行がよくなり、不調がやわらぎます。
こまめに体を触り、少しずつ意識を向けるようになると、いろんな体の声をキャッチできるようになります。疲れも含めて体に全部出るんですよね。
健康な体はすべての土台。セルフケアは、やりたいことを叶えるための準備の時間です。できることからでいいので、自分を大切にする習慣を始めてみてください。

ARISA
高校生のときからモデルとして活動し、2016年に初めてピラティスに出会い体型や体の不調を改善。
学んでいくうちに痩せ型の体型の悩みの原因が隠れ肥満であったことを知り、自分と同じ体重以外の身体のお悩みをピラティスで改善する専門家として活動中。
▼Instagram▼
https://www.instagram.com/arisa520pilates
ARISAさんの歩みは、日々の中で体と心に向き合うことから、自分らしい生き方を見つけてきたプロセスでした。大きなことをしなくても、少しずつ積み重ねることで、未来は変わっていきます。
Change/meでは、ARISAさんのピラティスレッスン(オンライン)を毎週開講しています。 「変わりたい」と思った今こそ、その気持ちを大切に。
あなたの一歩が、新しい毎日をひらいていくはずです。ぜひ、その一歩をここで始めてみませんか?
